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注意:書評ではなく覚書です。ほんの一部ですがネタバレがあると思われますので読む人は注意してください。敬称略です。

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2007/6/25 鮮血のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険1> 笠井潔 講談社文庫 Amazon.co.jp
SFの要素を入れずに描いた、圧倒的な俺様主人公九鬼鴻三郎の冒険活劇。過去の作品によってメタ的に未来からその能力と存在を保証されているので、安心して読める。ムラキよ、早く登場してくれ。
2007/6/23 涼宮ハルヒの動揺 谷川流 角川書店 Amazon.co.jp
今までの物語の間を埋めるような超ライトな短編集だった。そろそろ長編が読みたい。
2007/6/15 ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2 東浩紀 講談社現代新書 Amazon.co.jp
2000年代のライトノベルブームをからめて、「文学のポストモダン化」について考察している。後半で大きく扱われている美少女ゲームからは、われわれ女子はもともと疎外されているわけだが、そこで何が起こっているのか、状況が分かった気がした。そしてなぜ自分が物語を、しかもメタなものを求めるのか、少し分かった気がした。
「批評的=臨界的」について、「(略)なにか特定のジャンルにおいて、その可能性を臨界まで引き出そうと試みたがゆえに、逆のジャンルの条件や限界を無意識のうちに顕在化させてしまう、そのようなアクロバティックな創造的行為一般を指す形容詞(略)」(323頁)とあり、ああなるほどなと思った。それで時としてモンスターみたいな作品が生まれるのだ。
2007/6/11 ゲゲゲの鬼太郎 水木しげる(原案) 沢村光彦 角川文庫 Amazon.co.jp
うおー、鬼太郎がかっこいい。わりと映画に忠実か、と思いつつ読み進めていたのだが、いつしか頭の中の鬼太郎はウェンツではなく漫画のイメージに置き換えられていた。妖怪と戦ったエピソードや鬼太郎の出自などが、簡潔にしかも上手くちりばめられているのもファンには嬉しいところ。ラストの「ゲッゲッゲッゲッゲッのゲッ」で完全に水木漫画とシンクロ。
記憶に残る一文として「目玉おやじの虹彩に不振と警戒の色が浮かぶ」(130頁)を挙げておこう。これは映像では表現が難しいノベライズならではの名文である。
2007/6/1 カバラ ロラン・ゲッチェル 文庫クセジュ Amazon.co.jp
知りたかったのはセーフェル・イェツィーラー(形成の書)とかセーフェル・ハ・ゾーハル(光輝の書)あたりの悪魔くんでもおなじみの書の内容とか、ゲマトリア(数秘術)とかだったのだが、この『カバラ』はカバラ全体の歴史書という感じであった。知らない単語が多いなりに勉強にはなった。ユダヤ人とはすごい思想を抱えた民族なのだということを実感。単にトーラーを研究するのではなく、分散が様々な学派や思想を生み出してきたのだった。なるほど。
2007/5/25 フェイト/ゼロ 1・2 虚淵玄 TYPE−MOON BOOKS
全員予定調和的に死を迎える物語に慣らされている人(特にゲームで)には辛い本ではないと思う。面白い文章を書く人だと思った。読みやすいとは言えないけれど、戦いのシーンの臨場感は剣豪モノを読むが如し。
ぜひ普通に本屋に置いておいてほしいものだ。
2007/5/12 前巷説百物語 京極夏彦 角川書店 Amazon.co.jp
『怪』誌で1つ1つの話は読んでいたものの、やはり今回も1冊の書籍となったものをまとめて読んだ感じが素晴らしく良い。書き下ろしの一編「旧鼠」で、又市が何故御行姿になったのかが書かれている。まだ青臭い又市がいっぱしの化け物使いになるまでにはまだ時間がかかりそうだ。巨悪の正体は未だ解明されておらず。“前(さきの)”物語にも続きがあるようで、これまた楽しみ。
2007/4/28 トーマの心臓 萩尾望都 小学館文庫 Amazon.co.jp
ギムナジウムというキーワードで再読。やっぱすごいわ。1冊で完結しているのに、この重み。
2007/4/27 百鬼夜行抄 3 今市子 朝日ソノラマ Amazon.co.jp
尾黒の恋のエピソードがなんとも面白い。鳥と魚じゃぁ、どうにもならんな。
2007/4/23 妄邪船 人工憑霊蠱猫 化野燐 講談社NOVELS Amazon.co.jp
化野氏の本にはいろいろな情報がさり気なく鏤められているので気が抜けない。特に本草系の学者と書物は存在するものと創作されたものが入り乱れて情報の坩堝。ちょっと調べてみなきゃ。江戸の縦横の妖怪ネットワークというのがツボであった。本当にあったのなら面白いのに。
にしても白石君(=白澤)、少しは強くなったのかな。戦闘系ではなく癒し系の個(キャラ)として本当の意味で自立していけるかな。しかし小夜子さんの涙を見て何も思わんかね。(オマエハ ホントニ ニブチンダナ)とか白澤から言ってやってほしいもんだ。
2007/4/22 新本格魔法少女りすか3 西尾維新 講談社NOVELS Amazon.co.jp
今回は魔法ではなく知略・策略・謀略合戦といったところ。キズタカ最大のライバル出現で大ピンチ。またいいところで終わっちゃうし。それにしてもこの傷と血に置き換えられる2人の関係性がたまらなく良い。小学生のくせしてまったく。そうそう今回はキズタカの人間くささと弱さが全面に出てるのもよかった。
2007/4/11 少女には向かない職業 桜庭一樹 東京創元社 Amazon.co.jp
この本に登場する殺人者の2人の少女は、ライトノベルやアニメに登場する無敵の少女たちや闇の部分を抱えた揺るぎのない精神力を持つ少女ではない。衝撃的でもなく残酷でもない、短絡的に考えてついやってしまったような殺人。問題を抱えてぱんぱんに膨らんだ気持ちが破裂する様子の描写には共感できる。現実世界の少女たちは実際にはどんな感覚で生きているのだろう、と思った。
2007/4/10 幻夜 東野圭吾 集英社文庫 Amazon.co.jp
大枠は『砂の器』のサクセスバージョンといったところ。前作『白夜行』にあったような、悲惨な人生に立ち向かう主人公たちの一途な思いとやらはそこにはまったく存在せず。ヒロインのとんでもない悪女っぷりは、綾瀬はるか(TVドラマで演じていた)から米倉涼子にキャスト変更したかのよう。若く美しいヒロインが歳を重ねてどのように苦悩するのかを知りたいので、是非続編を。因果応報の世界だと、悪女は醜く崩れ果てるというのが常套なんだけどね。
2007/4/8 ハンニバルライジング 上・下 トマス・ハリス 新潮文庫 Amazon.co.jp
『レッドドラゴン』とか『羊たちの沈黙』を読んでいなければ相当退屈な話だと思われる。レクターがいかにして怪物になったかなどというアナザーストーリーは別にどうでもいい(と思うような内容だった)。が、コン・リーの紫夫人は映像で観てみたいかも。
2007/4/5 高丘親王航海記 渋澤龍彦 文春文庫 Amazon.co.jp
渋澤の遺作であり唯一の長編小説。幼い頃の経験あるいは幻想にとらわれて生きることのなんと甘美なことよ。そういう人生を送りたくないと思いつつも憧れてしまう。同じ幻想的な旅物語でも、若きカンディードの生に対する諦観や幻滅を感じるに至る旅と、天竺というワンダに憧れ続けてようやく晩年になって出立した親王の死に至る旅は対照的だ。にっこり笑って虎に喰われようなんて発想は恐ろしいと言うよりもやはりエロティシズムの極致なのだろう。たしか、マルキ・ド・サドの「悪徳の栄え」(他の作品だったか)でも虎(ライオンだったかも)に人を食わせて喜ぶ場面があったし、釈迦が前世で虎に食われて死んだという話もある。今回は“虎”(あるいは猛獣)という象徴が気になった。
2007/4/2 涼宮ハルヒの暴走 谷川流 角川書店 Amazon.co.jp
長編だと思って読んでいたら中編集だった。「エンドレスエイト」では、何万回も繰り返される夏休みからの脱出というテーマが、同時期にやっていたゲーム『ひぐらしのなく頃に』とかぶって不思議な気分になる。最後の「雪山症候群」で閉じこめられた異世界の真相とその状況を引き起こした犯人がまったく分かっていないので、今後の展開に期待。
2007/4/2 團十郎切腹事件 戸板康二 創元推理文庫 Amazon.co.jp
歌舞伎・演劇評論家の戸板氏が乱歩に勧められて書き始めたという老優中村雅楽の名推理ものの短編集。初出は昭和33年の「宝石」の「車引殺人事件」。陰惨な事件ものというより、雅楽がいなければ迷宮入りしていたに違いないような小さな事件が多い。なんだかこのご時世にほっとさせられるような一冊。小道具立てもあるが心理的な要素も多く、劇場や俳優たちの人間関係などの裏側がわかるのが、歌舞伎好きには特にたまらない。探偵役の雅楽は五代目歌右衛門丈がベースになっているとか。
2007/3/23 iKILL 渡辺浩弐 講談社 Amazon.co.jp
ネットやゲーム時代に登場した新しいタイプの暗殺屋小田切明の物語。人を殺して始末するという行為はとても大変。やればやったで自分に返ってくる…。人間のどうしようもなく嫌な部分がてんこ盛りな上に非常に残虐な表現も沢山あるのだが、救いようのない現実に光が見える部分もあり、読後感は結構すっきり。しかし、このご時世に本当にありそうな話だが、似たような話がニュースでもって流れたら具合が悪くなりそう。
2007/3/20 私家版鳥類図譜 諸星大二郎 講談社 Amazon.co.jp
なんと“鳥”だけを題材にしてここまで面白い物語を紡ぎ出せるのか。無限に続く塔の話がボルヘスっぽくて好きだ(塔の外では世界から拒まれた忌まわしい存在として半人の鳥が飛び回っている)。他には、魂が鳥の形をしていると信じられていた日本の古代の物語があったり、居眠りする鳥探偵もの(オチあり)があったり、中国の名言(しかも鳥にちなんだ)を吐く鳥たちの創世記的な物語があったりと、全部違うテイストで鳥を楽しめる一冊。
2007/3/18 幻の特装本 ジョン・ダニング ハヤカワ文庫 Amazon.co.jp
『死の蔵書』に次ぐ2作目。ポー『大鴉』の特装本の話ということで、本当はこちらを読みたかったのだ。前作よりも断然面白くなっている。ハリウッド的な主人公なのは相変わらずだけど、古本ネタがさらに濃くなっていて楽しめた。
2007/3/15 死の蔵書 ジョン・ダニング ハヤカワ文庫 Amazon.co.jp
主人公は優秀な刑事で稀覯書に詳しい古書コレクターで、しかもタフガイで腕っ節が強く、気の利いた詩的なセリフを吐き、情に厚く、その上女にももてる……っておいおい。
それはともかく、アメリカの書痴がどのぐらい狂っているのかを知りたかったので、よい参考書になった。主要な登場人物が全員古本関係者。古本好きがいなければ起こりもしなければ、解決もできなかった事件。書いたのは古本屋の店主だという。
2007/3/10 パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.3 「Three Cheers(万歳三唱)」 清涼院流水 講談社 Amazon.co.jp
ちょっぴり動いた!クローバって本当はエ(→イ)ァブゥ(=evil。合ってる?)な存在じゃないのでは?
2007/3/5 探偵儀式 1 清涼院流水大塚英志箸井地図 角川書店 Amazon.co.jp
どんどんやっちゃってください。
2007/3/1 百鬼夜行抄 2 今市子 朝日ソノラマ Amazon.co.jp
面白いキャラが増え続けている。ますます今後が楽しみ。
2007/2/26 パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.2 清涼院流水 講談社 Amazon.co.jp
ちっとも進んでないじゃないか!京都の観光案内書として役立てるしかないなあ。
2007/2/20 パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.1 清涼院流水 講談社 Amazon.co.jp
魔法の英語(キャナスピーク)と京都の地理がばっちりわかる本。少年少女に向けた清涼院式の実験的学習本か?と思っていたら、最後の数ページになって言葉遊びも含む清涼院的展開。一冊丸々序章という印象だったが、これは次号に期待。
2007/2/12 百鬼夜行抄 1 今市子 朝日ソノラマ Amazon.co.jp
やっと読み始めた。面白い。なんで今まで読まなかったんだろう。不思議だ。
2007/2/11 カオスコープ 山田正紀 東京創元社 Amazon.co.jp
乖離性障害患者が語る記憶は意味不明で、こりゃミステリとしてどうなのかと思いながら読み進めたが、頭の片隅でどこか期待していた通り、一気に覚醒の方向へ。ポーの『大鴉』について語る浮浪者のエピソードが好きだ(最後のシーンも含めて)。
何かの映画にインスパイアされて書いたとあるが、『バニラ・スカイ』的「どこまでが現実なのか?」というテーマではなく、むしろジョージ・オーウェル『1984』的監視社会の恐怖という印象が強い。
2007/2/6 刀語 第一話 絶刀・鉋 西尾維新 講談社 Amazon.co.jp
今度は時代劇か。刀を使わない剣士という設定は面白い。どんな技だかさっぱりわかららなかったが(まさか最後まで出さないつもりじゃ…)。山田風太郎の忍法帖を読んだときに感じた対戦ゲー的な要素をかる〜く文章にした感じ。いいけどこの内容にあと11ヶ月分金を出すかどうかだな。
2007/2/1 DDD 1 奈須きのこ 講談社 Amazon.co.jp
すごいと思った。正直かなわない。こういう発想はそこら辺の頭の中からは絶対に生まれない。『空の境界』はゲーム的な要素が強かった(月姫からこちらが勝手に受け取っていたイメージだとしても)。DDDは奈須きのこによってきちんと小説として描かれた記念すべき作品になるのではなかろうか。確かにヒントとエピソードの散乱はゲーム的で一寸狂うと卑怯な展開になりがちではあるのだけれど、時間の逆転も含めて私は決して嫌いではない。“あえて”同じパターンの叙述を繰り返すという冒険も好きだ(4度美味しいわけで)。大仰で奇妙な表現も少なくなったし。次作はどんな展開になるのか期待大。
2007/1/27 封神演義 下 許仲琳著 渡辺仙州訳 偕成社 Amazon.co.jp
下巻はなんだか大急ぎで進みすぎて、それがゲームのフローチャートを見ているような感じ。誰がどんな武器と技とを持っていて、乗り物の動物は何で、師匠の仙人が誰で、誰と戦って、どうやって死ぬ…というような。そこらへんはまさにRPGの世界そのもので(ドラクエよりFFに近いか)、なんというか中国四千年のオブジェクト指向?
天界の思惑やサブキャラの子供時代の話など、膨らませると面白いアナザーストーリーになりそうなところも、拍子抜けするぐらいあっさりと終わってしまった。しかしただでさえ壮大な話だし、これをみっちり、たとえば馬琴みたいな偏執的な人が書いたらネバーエンディングかも。
2007/1/17
涼宮ハルヒの消失 谷川流 角川書店 Amazon.co.jp
今回は世界の改変という面白いテーマだった。「ロボットやAIが感情を持つことはあるのか」という普遍的な問いのひとつの見解が実にあっさりと書かれている。それはバグとして蓄積し、誤動作を引き起こす。思わずおおと唸る。主人公が望んでいたはずの普通の世界を選択しなかったこと、現実が変わってしまうことに対する恐怖などなど、ストーリー的に優れた点は他にもたくさんある。調べてみたらこのエピソードはとても評判が高いらしい。
2007/1/14 ご冗談でしょう、ファインマンさん(上) リチャード P. ファインマン 岩波書店 Amazon.co.jp
ファインマンさんは、きっと箸が転んでも面白いし、それがただ転がっているだけとは思わなかった人なのだろう。人生は面白いものだということを再認識させられる本。しかし、マンハッタン計画に関わっていたことも、実験などとは関係ないところで起こったエピソードとともに面白可笑しく語っているが、彼がそれでも計画が作り出したものについて決してお気楽に考えていたわけではないこともよくわかる。フォン・ノイマンの忠告によって「社会的無責任感」を得て、幸福になったとあるが、無邪気に見える物理学者や数学者だってきっといろいろ考えていると思いたい。(博士の異常な愛情でも見よう)