TOP  読書覚書

読書覚書
注意:書評ではなく覚書です。ほんの一部ですがネタバレがあると思われますので読む人は注意してください。敬称略です。

最新
2008年後半
2008年前半
2007年後半
2007年前半
2006年後半
2006年前半
2005年後半
2005年前半
2004年後半
2004年前半
2003年
2007/12/30 駅から5分 (1) くらもちふさこ 集英社 Amazon.co.jp
ひさしぶりにくらもちふさこを読んでみた。面白いと聞いていたので。一話完結の短編連作だが、ただの短編連作ではない。ある駅を中心としたマップ上で起こる物語。ある意味ゲーム的な箱の中で物語が進行する。小中高校生+大学生+30代の大人がそれぞれ主人公なので、読者はいろいろなところで感情移入できるのじゃないかな。地域BBSの話と記憶を失ってしまった男の子の話が好き。
2007/12/25 聊斎志異〈上〉 蒲松齢 岩波文庫 Amazon.co.jp
中国の怪談話を集めたもの。怪談=ホラーではまったくない。幽鬼や狐が美しい女として登場する話が多い。そして多くの場合官僚試験を受ける若者の出世にそれらの存在が大きく関わってくるのが面白い。酒を飲ませてあげたり、骨を拾って埋めてあげたりすると、ちゃんと恩返ししてくれるというのが王道。幽鬼を寵愛して甦ったというパターンも。中に一つ毛色が違うツンデレ系戦闘女子の出てくる話があるのだが、ラノベ風でお気に入り。
2007/12/19 コミック怪 vol.2 角川書店 Amazon.co.jp
大塚英志原作「とでんか」連載開始。都市伝説の存在(非存在)が実体を伴ったキャラとして登場。笹山とか木島とかいう名前もちらりと。まだ始まったばかりなので、事件ははっきりしないが、今後楽しみ。しかし、コミック怪自体しばらく続くのだろうか。
2007/12/15 妖怪変化 京極堂トリビュート 講談社 Amazon.co.jp
そうか西尾維新はあれを選んだのか。認識→姑獲鳥というのもありだけど、存在について書くならば一番よいのかも。何たって『塗仏』が好きなのだよ、私は。京極夏彦の書く京極堂に近いと思ったのが、牧野修。凄く恐ろしくて怖くて悲しい話だった。呆然そして脱帽。柳家喬太郎には爆笑。変な駄洒落とか。上手いなあ。にしても、あと50編ぐらい続けて読みたいものだ。
2007/12/13 ×××HOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル 西尾維新 講談社 Amazon.co.jp
あやかしの出てこない三編。人間が世界を認識する時に生じてしまうものを描いたということだろう。最後の話になるに従って西尾色が濃くなる。百目鬼君もひまわりちゃんも名前しか登場しない。まるともろももこなに至っては影すらない。侑子と四月一日との関係だけで静かに進む。最後の一編にはついに侑子本人も出てこないが、侑子との関係、自分と世界の関係に直面した時の四月一日の選択が示される。ノベライズというよりはトリビュート。今回も維新に引きずり込まれた。
2007/12/9 銀河ヒッチハイク・ガイド ダグラス・アダムス著 安原和見訳 河出文庫 Amazon.co.jp
新訳で読み始める。あらゆるSF的要素が盛り込まれているのだが、分かるような意味不明なようなものだらけ(無限不可能性ドライブとか)。数値設定の適当さ加減もたまらん。あっけなく破壊される地球とかネズミ以下の人類とか、人間中心主義に対する風刺も含まれていて、実は非常に濃い内容だったりする。設定も面白いけど、表現が面白いことも忘れてはいけない。たとえば、日本語にはない「船が空中に浮かんでいるさまは、レンガが絶対に浮かばないさまにそっくりだった」(47頁)とかいう表現のおかしみは何とも言えない。
2007/12/3 コンテンツの思想―マンガ・アニメ・ライトノベル 東浩紀 青土社 Amazon.co.jp
東浩紀との対談が4本。「ほしのこえ」の新海氏との対談と「S・A・C」の神山氏との対談が非常に面白かった。すごいものができてしまう過程にはいろいろなものが詰まっているのだな。それと西島大介氏の面白さが初めて分かったかも。次はちゃんと本を読んでみよう。「キャラ/キャラクター」を巡る話はなんだかかみ合っていない感じで読んでいてイライラ。重要なテーマなのかもしれないけど、最後にはどうでもいいような気分になってくる。また別な場所で読むか聞くかしたい。
2007/11/29 ユリイカ 2004年9月増刊号 総特集 西尾維新 青土社 Amazon.co.jp
ネコソギラジカルの前に出た本なので、いろいろな人がいろいろなことを期待したり想像したりしているのが面白い。「きみぼく」シリーズも読みたくなったが、一気に読むのもなんだかもったいないのでもうちょっと寝かせておこうと思う。
2007/11/26 ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い 西尾維新 講談社NOVELS Amazon.co.jp
終わってしまった。がしかし、この大団円はたまらない。殺人者と殺人鬼と殺し屋が溢れる世界で、それを認めて生きること。それが非日常の日常を受け入れるってことなのだね。この世界では。
これで最後なので、物語の主要部分で大きな位置を占めるのに大きな役割を果たしてこなかった青色サヴァン──すなわち物語のバグである玖渚友について考えてみた。ずっと好きになれなかった。彼女は敢えて壊されることでいーちゃんをつなぎ止め、今度はその天才を捨て去ることでいーちゃんをつなぎ止めることに成功した。あざとすぎてすごく嫌。しかも最後には地味な女になってるところにさらに苛つく。それなのに心に沁みるのはなぜか。所詮対象aだってことに二人とも気が付いてる。
いろいろ考えたけど、とりあえずこんな感じ。
2007/11/25 ネコソギラジカル(中) 赤き征裁VS.橙なる種 西尾維新 講談社NOVELS Amazon.co.jp
特に展開はない巻だった。橙なる種はいーちゃんの元に戻ってきたけど、あっさり敵撤退。青色サヴァンが成長し始め、零崎人識が帰ってきた。きっと次につながるのだろう。
2007/11/24 ネコソギラジカル (上) 十三階段 西尾維新 講談社NOVELS Amazon.co.jp
本格的に敵登場だよ。しかし巨悪な感じがしない。物語の終わりと世界の終わり。すごくメタな展開が期待できるのだが、そんなのは関係ないのかもしれない。山田風太郎的な総力戦になりそうな予感も孕みつつ、きっとそうならないんだろうなとも思う。
2007/11/22 ヒトクイマジカル―殺戮奇術の匂宮兄妹 西尾維新 講談社NOVELS Amazon.co.jp
いーちゃんは死んだ人と生きている人を区別しない。たとえそれが戯言だとしても。子荻ちゃんにしても巫女子ちゃんにしても今でも普通に生きているように語る。これによっていーちゃんの中で死者は永遠に生き続けることになるのだった。これも不幸を引き寄せる人の処世術なのかね。
それにしても姫ちゃんの死は痛すぎる。もしや…とは思っていたものの、これは『塗仏の宴』の織作茜に匹敵する衝撃であった。今回は匂宮兄妹には騙されなかったけどね。
2007/11/20 サイコロジカル〈下〉曳かれ者の小唄 西尾維新 講談社NOVELS Amazon.co.jp
いーちゃん、酷い論理…。一番酷い論理をあえて持ち出してきたとしか思えない。しかし、これまでの中で一番ミステリっぽいと思った。でもって、兎吊木ではなく、小唄ちゃんにすっかり騙された。
2007/11/19 サイコロジカル〈上〉兎吊木垓輔の戯言殺し 西尾維新 講談社NOVELS Amazon.co.jp
天才が何で天才なのかまったく根拠も軌跡も示されていないので、単に全員ちょっと変わった人たちのように思える集団が何かをするらしい展開。222/242頁で「総ページの半分が終わっているのに誰も殺されない(略)そんな推理小説があると思う?」って登場人物が語ってるけど、上巻も最後まで事件らしいことは起こらず、あとはいーちゃんのぐちゃぐちゃで、伏線複線伏せ…。
2007/11/18 クビツリハイスクール―戯言遣いの弟子 西尾維新 講談社NOVELS Amazon.co.jp
物語的にはどうということはないけれど面白い。過去への言及やほのめかしや暗示などなどが多くてつかれるし、いーちゃんが嘘つきで困るけど、面白いからすべてよし。紫木一姫がかわいいので、ぜひともカムバックを願う。
2007/11/17 すばらしい新世界 ハックスリー著 松村達雄訳 講談社文庫 Amazon.co.jp
完璧に制御されたユートピアの話。ものすごくこわい話だ。テーマは現在の我々の社会にも通じる。しかし最近SFを読むのが少々つらい。特にこの本などは普遍的に面白い内容のはずなのに。リアリティの描き方に求めるものが違ってしまったような気がする。
2007/11/16 クビシメロマンチスト―人間失格・零崎人識 西尾維新 講談社NOVELS Amazon.co.jp
読んでいなかったのだよ。「青色サヴァン」があまり好きになれなかったというのもある。しかしついに。いーちゃんの化けものっぷりがたまらん。全部読んでしまいそう。
2007/11/15 眼球譚(初稿) ジョルジュバタイユ著 生田耕作訳 河出文庫 Amazon.co.jp
フランス語の先生との話題にバタイユが出できたり(彼らに縁のある『ランスの大聖堂』)、ボードリヤールのバタイユに関する記述を読んだり、バタイユの妻シルヴィアが後にラカンと結婚したことを知って仰天したりして、最近ちょっと気にかかっていたので読んでみた。若い時とはだいぶ違う印象。球体幻想とかエロティシズムについて考えながら読むのも面白いが、今回は過剰な死と生というものとか、バタイユの転向について思いをはせながら。
2007/11/13 涼宮ハルヒの陰謀 谷川流 角川スニーカー文庫 Amazon.co.jp
久々の長編。このキョンを中心にしたハルヒの世界は基本的に時間の概念を中心に進むということが分かった。未来人がいるからしょうがないのか。ひょっとしてこれ以上の大きなSF的展開はあまり望めないのかもしれない。面白いからよいけど。これまでの短編で謎のままだったものが敵対組織として姿を現し始めたのも今回の大きな特徴。シリーズものにありがちな打開策ではあるわけだが。さて、広げすぎて畳めない、あるいは整合性が取れない系にならなきゃいいけど。
2007/11/5 探偵ガリレオ 東野圭吾 文春文庫 Amazon.co.jp
旬の読書。ひさびさにストレートな物理トリックもの。しかし物理は苦手なので、軽くすっとばして読む。こちらのキャラはあまり毒がない感じで、ドラマと併せて見ないと、すぐに内容を忘れてしまいそう。にしても「容疑者X」つながりだったとは、ドラマが始まるまで気が付かなかった。
2007/11/2 エヴァンゲリオン完全解体全書再起動計画 特務機関調査プロジェクトチーム 青春文庫 Amazon.co.jp
前の2書によって、魂の救済というテーマに心を奪われ、グノーシスで読み解くのが普通になっていたので、ずっと違和感が付きまとっていた。しかし、遺伝子関連のタームは参考になったし、物語要約としてのポケット本としては訳に立つ一冊だと思う。
2007/10/27 ヴァリス フィリップ・K・ディック 著 大瀧啓裕訳 東京創元社 Amazon.co.jp
カバラ(カッバーラー)つながり。ディックすごすぎ。とても理解できたとは言えない。でも次に進もう。
2007/10/25 まこという名の不思議顔の猫 前田敬子 岡優太郎 マーブルトロン Amazon.co.jp
妙に味のある表情をした猫のまこちゃんの写真集。短いながらもそのコメントには愛があふれている。猫にもいろいろな猫(にゃん)生があって、鳴かないで目で訴えるようになったり、ゴハンを急いで食べるようになったりするのだ。幸せなおうちで過ごせるようになってほんとうによかったね、まこちゃん。
2007/10/23 エヴァンゲリオン解読―そして夢の続き 北村正裕 三一書房 Amazon.co.jp
エヴァに対する思い入れは伝わってきた。納得する部分もとても多かった。しかし暴走する文章はいただけない。解釈論に作品論が差し込まれていたり、印象から飛躍して世界観をまとめていたりするあたり。使徒がゲンドウの妄想の産物というのは、大瀧氏のシンジの夢オチと同様に心象的に納得できない。序章で述べているように、「めざすのは、あくまでも、作品の本質に迫ることで(省略)その本質が何であるかを論じることは、つまるところ筆者自身の主観の領域にある」ということなので、ひとつの可能性として尊重したいと思う。ただ、『エヴァンゲリオンの夢』に対する反論という形を取ったことは残念。「反論に値する充実した本であるから」としてはいるが、読後感悪し。純粋に持論を展開すればよかったのにと思う。
2007/10/13 東京から考える―格差・郊外・ナショナリズム 東浩紀 北田暁大 NHKブックス Amazon.co.jp
著者の二人が住んだり通ったりしていた町(場所)を中心に、東京という都市について対談している。守備範囲が狭すぎて、ただの印象論のような気もする。なんとなく渋谷の端っこで(虫食いながらも)多くの時を過ごしてきた私には、お二人が同じ東京でも遠いところについて語っているような気がした。ただ、16号線的とかジャスコ化とかいうのは、なんとなく分かるし、きっとそうなっていくのだろうなぁとも思う。そういえば、渋谷東急デパートの前にドンキができた時は渋谷も終わったな、とか勝手に悲しくなったことを思い出した。特に渋谷が好きなわけでもないのだけれど。
2007/10/4 エヴァンゲリオンの夢―使徒進化論の幻影 大瀧啓裕 東京創元社 Amazon.co.jp
オープニングから始まって、『エヴァ』の一話一話を解説…というより分析している。「ほう」「なるほど」と思うところがたくさん。この本は劇場版も含めてエヴァ世界全体の整合性を取ることを一番の目標としているらしいのだが、ちょっとしたミスやアニメっぽい曲解も拾って解析しまっているので「そこは目をつぶろうよ」と突っ込みたくなるところも。しかし、SFやオカルトや暗黒神話系書籍の翻訳者でもある作者ならではの天使論やカバラに関する解説は非常に面白い。例えば使徒に付けられた天使の名前の正しい読み方、「死海文書」の意味などなど。これだけの本を書くのは大変だったろうなと思う。
ただし、個人的に「シンジの夢だった」的な結論を認めることはできない。どんなに整合性があっても可能性があっても心証的に。で、平行世界の一部が干渉しあった結果、みたいなことを考えてみたりもした。
2007/9/27 びこたんと愉「怪」な仲間たち 今井美保 角川書店 Amazon.co.jp
フラッシュ漫画とか『怪』誌では読んでいたものの、やはりまとめて読むと面白い。オールカラーだし。時間がない中での編集だったにもかかわらず、下の方にぱらぱら漫画があったり、プチ妖怪情報があったりと、細かいところまで気が行き届いている楽しい一冊。
2007/9/26 コミック怪 vol.1 角川書店 Amazon.co.jp
『怪』から出たコミック雑誌。『怪』テーマで一冊とはすごい。もうちょっと水木色が強くなるのかと思っていたら、そうでもなく。少女漫画系あり、ファンタジー系あり、ギャグ系ありと、読み切りも連載も多彩で面白かった。『魍魎の匣』はまだまだ先が長そう。次号からは大塚英志の連載も始まるそうで、そちらも楽しみ。
2007/9/25 幼年期の終わり アーサー・C・クラーク著 福島正実訳 ハヤカワ文庫 Amazon.co.jp
気になることがあったので再読。にしても、なんと読みやすい訳なのだろう。
2007/9/20 現代思想の冒険 竹田青嗣 ちくま学芸文庫 Amazon.co.jp
どうして今この本を手に取ったのかよく分からないのだが、得るものがたくさんあった。近代から現代に至るまでの思想の流れを分かりやすく解説しており、思想というものが今どのような可能性として意味を持つことができるのかについて考察している。書籍として出版されたのは1987年で、その当時といえば難解なポストモダニズム全盛の時期でもある。その中でこのような本が書かれていたのだ。知は権力のための道具やファッショナブルなオモチャではない。ただし、もっとポストモダン化が進んでいる20年後の今、社会や世界の認識不可能性というものが現実に浸透していて、本当に言葉が届きにくい世の中になってしまったのだなあと思う。このような状況から何か新しい思想はきっと生まれてくるのだろうけど。「そのうち人は考えるのをやめた」なんてことにはならないだろうから。
2007/9/15 ひぐらしのなく頃に 第1話 鬼隠し編 上 竜騎士07 講談社BOX Amazon.co.jp
正直、「えー、ゲームと同じ?」という感じ。キャラは勿論、口調からフローまで。何かは分からないけど違うものを期待していたので、肩すかし。でもあのゲームをやっている時のつらさ(面白さはもちろんあるのだが)を考えると、文章でもう一度読むのもありかなとも思う。
2007/9/3 本格推理委員会 日向まさみち 角川文庫 Amazon.co.jp
作者が後書きで「この作品はライトノベルやキャラクター小説という枠組みに入れてもらえるのだと思います」と述べているが、この冗長さはライトノベルではないだろう。というか、流れにライトノベルの手法(キャラとか)を持ち込んだというか。だから何なんだって話で、自分が何が引っかかっているのかよくわからないのだけれど。丁寧に解説した学園物語だし、主人公が悩みを乗り越える話だし、タイトルにあるように本格推理=ミステリ(謎解きもあるし、読者への騙しもある)なのだと思う。やはり人に何かを突きつける探偵の「なにさま?」的なところに焦点を当てていたりして、予想外に深い話だった。続きは出るのだろうか。
2007/9/1 ダブルダウン勘繰郎 西尾維新 講談社NOVELS Amazon.co.jp
西尾維新によるJDCトリビュート。京都つながりで読む。と言ってもJDCのビルが出てくるだけで、観光とは無関係。ちょっとした引っかけもあったりして、軽く楽しめた。人の秘密を暴く探偵の負の側面に自己言及して(激しくキャラに語らせて)いる部分が大きく、ただのキャラものには収まっていないところがよい。
2007/8/28 太陽の塔 森見登美彦 新潮文庫 Amazon.co.jp
頭でっかちで自我がぱんぱんに膨れあがった、うっとおしい失恋男の話だと思っていたら、いつの間にか引き込まれていた。他人と同様、自分も平等に卑下してるところに奇妙な共感。登場人物たちは回りにはいなかったタイプだけれど、ぱっとしない日常も、頭の中でぐじぐじぐるぐる考えていることもリアルに伝わってきた。青春物語だし、たしかにファンタジーノベルだった。ライトノベル系ではないファンタジーはひさしぶりだったので新鮮でもあった。
プラス、たまたま読んでいた前後に京都にいたこともあって、楽しめたのだと思う。
2007/8/23 エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 ジョン・ディクスン・カー 国書刊行会 Amazon.co.jp
17世紀の英国で実際に起きた殺人事件を題材にカーが謎解きを行っている。王が簡単に首を切られる時代、カトリックとプロテスタント、国王派と反国王派の陰謀が渦巻いて、一つの殺人事件が世論も巻き込んでとんでもない騒ぎになっていく。あちらでは有名な歴史的事件で、ミステリ界でもいろいろな人がこの謎に挑戦しているらしい。英国の歴史には弱いので知らなかった。カーはフェアな推理を行っている。歴史書としても面白い。しかしえん罪と大嘘つきがまかり通る酷い裁判だった。おそろしや。
2007/8/17 DDD 2 奈須きのこ 講談社BOX Amazon.co.jp
ほぼ、野球というスポーツと高校野球と部活と友情の話だった。出版が遅れたのは高校野球が盛り上がるこの時期に合わせたためか。もしそれも含めた上での書籍のエンタテインメント性を考慮したのならば、まさにパーフェクト。本に書かれているような猛暑だし。
物語は前回のテイストとは異なり、どうにもならない悲惨な人生に対する憤懣と諦めと復讐心、それに若き友情が同居している。悪魔憑きの話だけど青春だ。その分残りの話は次につながるというか、前回から続く、悪魔憑き対悪魔憑き、そして悪魔払いの凄絶なバトルの予感。
脅威を感じる能力の欠落とか、昼の記憶がなくなるとか、1人あたりに与えられている都合の良い属性が多すぎるのも、もはや気にならない。しかし、アリカは本当にカナタちゃんに勝てるのか?というか、キャラ増えてるし、本当に次で完結するの?
2007/8/12 無人島に生きる十六人 須川邦彦 新潮文庫 Amazon.co.jp
明治時代に太平洋の無人島に難破した16人のおじさんたちの漂流記。実話を基にしているというから驚き。恐るべし精神力でピンチを乗り切っていく海の男たちの姿は前向きすぎて、できすぎの印象は否めないのだが、それでもこの統率力はすごいと思う。今の時代の私たちには無理。全員死にもせず怪我もしないで帰国できたのだから、すごいものだ。親分アザラシと友達になる船員のエピソードには思わずほろり。食べなくちゃならなくなる前に助かってよかった。
にしても、昔からこの手の無人島漂流譚を読むたびに、難破した時には絶対に役に立てようとか思ったりするのだが、はたしていつかそういう状況になるときは来るのだろうか。
2007/8/4 KEI―夜明けのヴァンパイア 松本富之 角川ティーンズルビー文庫 Amazon.co.jp
知らなかったのだが、『夜明けのヴァンパイア』(映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の原作)を探していて、同じタイトルの本をみつけた。作者はTRPG出身らしい。イラストがCLAMPなのが嬉しいところ。
吸血鬼ものにはフォーマットがあって、属性や歴史なんかをちゃんと把握していないと、ずれた感じの物語になってしまうのだった。この話は、きちんとした属性に基づいた上で、ヴァンパイアウィルスとその突然変異いう新しい要素を追加している。要素としては『ブレイド』に感じが似ている。羽のように軽いが、面白い一冊だった。
2007/7/27 図書館戦争 有川浩 メディアワークス Amazon.co.jp
「メディア良化法」という法律で表現が規制されるようになった架空の未来。図書館は「図書館の自由法」を楯に検閲と戦い本を守る…。なんといっても設定が面白い。“情報の規制”というテーマは割と近くにあるものだし。この本はラノベ風の恋愛ものにまとまっていたが、通常ラノベではスルーするような設定が細部にわたって描かれているために、奇妙なテイストの本に仕上がっている。ハードカバーだし。この世界観のまま福井晴敏あたりが書くと、ヘヴィな戦いものになるんだろうな。そういうのも読んでみたいかも。この世界観はこれだけだとなんかもったいない。
2007/7/25 雷鳴のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険3> 笠井潔 講談社文庫 Amazon.co.jp
ヴァンパイヤ的要素は一切出てこない。それは想定の範囲内だとして、なんだか外伝ものとして、読まねばならない本を読んでいるという感じ。『ヴァンパイヤー戦争』に対して凄い思い入れがあるわけではないのだが、考えてみると、私が惹かれてしまうのは、矢吹駆なのか、矢吹という存在を抽出したような、置き換え可能なシニフィエとしてのムラキなのか、それとも笠井潔なのか。よく分からなくなってきた。
2007/7/21 「世界征服」は可能か? 岡田斗司夫 ちくまプリマー新書 Amazon.co.jp
目次を読んだだけでもう大爆笑。中身も抱腹絶倒。とにかく、世界征服の目的や手順など「世界征服は可能か」をまじめに考えてみようとした本であることは確か。ちなみに私は確実に王様タイプの世界征服者で、最後には怒り狂った人民に殺されるタイプである。
ふと思ったのだが、これを渋澤的悪女列伝的に、例えば、A:魔王タイプ→クリームヒルト(架空)、B:独裁者タイプ→則天武后、C:王様タイプ→マリーアントワネット、D:黒幕タイプ→ポンパドール夫人、のように当てはめてみることも可能(Aタイプは映画や物語にはなるけど、歴史にはなかなかいない)。こんなことを考え出すと、なんだか楽しい。
ところで、この本の最後では、現在を「経済と情報の自由化」が進んだ世界として定義している。しかし私が思うに、それらは未だ進行中である。たとえば情報について言うならば、某グーグルなどは未だ世界征服の過程にある、と言えるのである。もちろん某グーグルが、アニメや漫画における悪の秘密結社のように、あからさまに“悪”の概念を標榜しているわけではないけれけど、一部の人にとってそれは訳の分からない“過去の秩序を壊すもの(この本ではそれを悪と呼んでいる)”を代表しているとは思う。悪の概念はその時代によって変わるもの。これも世界征服のひとつの形ではないか、とか思ってみたりして。
2007/7/18 ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ 滝本竜彦 角川文庫 Amazon.co.jp
こちらがデビュー作。殺しても殺しても死なないチェーンソーの魔人と戦い続ける美少女…。セカイ系の話だと思ったらそういうわけではなく、自分の“傷”と戦う話。戦うものもないこんなぼやけた世界にボクがいてキミがいて、キミは闇雲に戦い、ボクは仮想の何かと戦いたい幻想をなんとなく持っている…。根幹にあるのはNHKと同じ。(もっと虚構的な)ファンタジーも書けそうなのに書かないところがこの作者のスタンスなのか。
2007/7/14 NHKにようこそ 滝本竜彦 角川文庫 Amazon.co.jp
ライトノベル系ファンタジー要素が含まれる小説かと思っていたら、本格ひきこもり小説だった。これだけ作者が自分(ひきこもりだった過去)をさらけだして、ロリコンやエロゲや合法ドラッグ等々…思わず引いてしまいそうなことばっかり書いているのに、あまり嫌な感じがしなかったのは、私小説的な香りが感じられないからかな。現実をどうにかして言語で表現しようとしていること自体は自然主義文学と言えるのだろうけど。ある意味、現代社会のひきこもりやオタクといった現象に共感し(というか今そこにそういうものがあることを受け入れ)ていないとつらい小説だとは思う。
2007/7/13 生き延びるためのラカン 斎藤環 バジリコ Amazon.co.jp
今私の中ではちょっとしたラカンブームだったりする。というより、ふと開いた本のページに“ラカン”の文字があったりする。ふと見に行った美術館でラカンを思い出したりもする。ヘンリー・ダーガー展なので、『戦闘美少女の精神分析』(齊藤環)の影響だったりするのかもしれない。
それはさておき、この本は世界一やさしいラカンの入門書でもある。よい本だと思う。ラカニアンにはいろいろ不満や意見があるのかもしれないけど。翻訳して世界中の(ラカンに)挫折した人に読んでもらうとよいかも。途中になってるジジェクを読み返してみよう。
2007/7/9 スクールアタック・シンドローム 舞城王太郎 新潮文庫 Amazon.co.jp
表題作と『我が家のトトロ』は、設定は変だったり残酷だったりするが、まぁよい話ということでここでは割愛。
『ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート』では、やり直し可能な人生とやり直さなくてもまあいいや的な人生について考えさせられた。変態の叔父に喰われては生き返る(実際には喰われる前に分岐するので、少女Aと少女A'が同時に存在する)少女の一方には喰われた記憶は残っていない。つまりまったく現状は変わっていないわけで、彼女に喰われても仕方がないという考えがある限り、何も変わることはない。主人公はその中で耐えられなくなって少女から離れていった。そういうことだと思う。同じくゲーム的な構造を持つ『All You Need is Kill』(桜坂洋)の、ループという現状から抜け出すだめの足掻きの繰り返しとは大きく異なる。
2007/7/1 みんな元気。 舞城王太郎 新潮文庫 Amazon.co.jp
単行本から収録された三篇。内ほとんどが表題作で占められている。メッセージ(作者が言いたいこと)が2つほど含まれているような気もするのだが、一方しか捕捉できない。しかし今それについて深く考える気にはなれないのだった。
2007/7/1 疾風のヴァンパイヤー<九鬼鴻三郎の冒険2> 笠井潔 講談社文庫 Amazon.co.jp
ノワールだ。主人公が危なげなさすぎる。しかし引き込まれる。そうか、このシリーズではムラキは登場しないのか。